文化庁が毎年行っている「国語に関する世論調査」というものがあります。
日本人の国語に関する意識などを調査して、国民生活に役立てようというものです。
その中で、平成24年度の調査において「激しく怒る」ときには「怒り心頭に達する」を使うという回答が67.1%にも上った、という発表が!
ちなみに、私もこの調査を受けていたのならば「達する」と答えていたと思います(~_~;)
題名でも触れている通り「怒り心頭に発する」が正しい使い方なのですが、なぜ間違った使い方として覚えられてしまったのでしょうか?
今回は、67.1%の中のひとりとして「怒り心頭に発する」の正しい使い方や語源などについて一緒に考えていきたいと思います。
怒り心頭に発するの意味・読み方とは?
「激しく怒る」さまを他の言葉で表すならば「湯気を立てる」「トサカに来る」「怒髪天を衝く」「逆鱗に触れる」などという表現が挙げられます。
中でも「怒り心頭に発する」という言葉は「激しく怒る」だけでなく、もっと言えば「心の底から怒りがこみ上げてくる」という非常に強い怒りを表した言葉とも言えます。
ここで注意したいところは、やはり「達する」ではなく「発する」を使うということ。
話はズレますが、読み方の説明を書いている時に「〇〇にハッスル?」と思ってしまいました。
ちょうど個人的に好きな番組名をイメージしてしまったので…。
そのおかげで私はおそらく、今後間違った使い方をしないのではないかなと勝手に思っています(笑)
怒り心頭に発するの語源とは?
余計な話はさておき、語源の説明に移りたいと思います。
「怒り心頭に発する」という言葉を見た時に気になるのは「心頭」という言葉ではないでしょうか。
「心頭」とは「心、心の中」を表す言葉のようで、あまり「頭」という部分を指すという意味はないみたいです。
しかし「心頭」という言葉を「頭」という意味を含むイメージで見ると
「激しく怒る」→「怒りが頂点に達する」→「怒り心頭に達する」
という流れとなり、本来とは違った使い方として、覚えられるようになるのではないかと思います。
また「心頭」という言葉を使った表現として「心頭滅却すれば火もまた涼し」が挙げられます。
ちなみに、意味は「何物にも迷いが無くなるほど心が穏やかであれば、例え火に触れても涼しく感じられるでしょう」と一種の悟りのような状況を表しているようです。
この場合の「心頭」も「頭」という意味はほとんどありません。
このような解釈でいけば「怒り」というものは、「頭」に達するのではなく「心の中」から発するものだということが理解できるのではないでしょうか。
それにしても「心頭」とはすごい言葉ですよね。
私もそこまで昇り詰めてみたいものです。
怒り心頭に発するの使い方とは?
「怒り心頭に発する」という言葉ですが、あまり日常会話では使わないのかもしれません。
怒っている人を目の前にして「あの人は怒り心頭に発しているねぇ」などという使い方はしないですね…。
それよりは「あの人は怒り心頭だ」や「部下からは怒り心頭の声が挙がっている」など「怒り心頭」として省略されたかたちで使用される場合のほうが多く見られます。
「怒り心頭」という言葉が1つの名詞のように使われているようですが
「あの人は怒り心頭(に発しているよう)だ」
「部下からは怒り心頭(に発するほど)の声が挙がっている」
というように省略されているということですね。
他にも例を挙げるのならば、例えば何気ないミスでお得意先を怒らせてしまった場合。
上司から「お客様が怒り心頭だからすぐ謝罪に行きなさい!」などと言われることもあるかもしれません。
このように「怒り心頭に発する」という言葉は「激しい怒り」を表していますので「おこ」でもなく「激おこ」でもなく「激おこぷんぷん丸」(もっと上のレベルを表す言葉もあるようですが)にも届くくらい「心の底から怒りがこみ上げる」場合に使われますね!
まとめ
いかがでしたか。
「怒り心頭に発する」の意味から、なぜ多くの人が間違った使い方をするようになったのかなどについて見てきました。
「心頭」とは「頭」という意味はあまり持たないということ、「怒り」は心の中から「発する」ものであるということが正しい覚え方をする上で重要のようです。
この点を抑えていれば「達する」という言葉を使わないようになるのではないでしょうか。
それにしても3分の2以上の方が、間違った使い方をしているということには驚きですね。
本人は正しい意味や言葉使いを理解していたつもりでも、意外に他の人から見たら、間違った使い方だったなどということはよくあります。
日常会話であまり頻繁に使う言葉ではないかもしれませんが、正しい使い方や状況に応じた使い分けができることは、周りからも「できる」人だという評価につながるかもしれませんね。
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