営業先から帰ってきた同僚が、「やっぱりツテがないと難しいですね。こういうのを取り付くヒマもないっていうんでしょうね。」と上司に報告してました。

横で聞いていた私は、「…取り付くヒマもないって言うんだったけ?」
確かヒマじゃなくて島だったように思うけど、自信がない…。


取り付く島もない


意味も無愛想な人のことを取り付く島もないって言うんじゃなかったかな?

私が間違った言い方をしているのかも…なんだか急に不安になってきました。

あなたも自分が覚えていた言葉が、実は間違っている恥ずかしい経験をしたことがあるのではないでしょうか。

恥ずかしい思いをしないためにも、今回は取り付く島もないの意味や使い方について紹介します。

では、まずは意味と読み方について見ていきましょう!



取り付く島もないの意味・読み方は?


「とりつくしまもない」と読み、漢字では「取り付く島もない」。

意味は、

  1. 頼りにする手がかりが何もないこと
  2. 相手がつっけんどんな態度で話しかけるきっかけがみつからないこと

の二通りがあります。



読み方の「しま」と「ひま」が混同されやすいことと、相手からつっけんどんにされる意味から、「取り付く暇もない」と間違われやすいです。


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取り付く島もないの語源

【取り付く島もない】の語源は、「航海に出たものの、近くに立ち寄れるような島はなく、休息すら取れない」といった状況のことで、困り果てる様子に例えたのが始まりだそうです。

この語源を読むと、なんだか不安な気持ちが湧いてきます。

航海術が発達した今でさえ、船で海に出ると安心して休める陸がないことに恐怖を感じる人は多いはずです。

ましてや航海術だけでなく、造船技術が未熟な時代に、海に出た船乗りたちの不安は計り知れないものだったでしょう。


死への恐怖に襲われれば、気丈な船乗りでも陸地を求めるはずです。

それなのに近くに島が見えない状況は、ただ困るのではなく、絶望していると言ってもいいでしょう。


また、「取り付く」の意味を調べると「すがりつく」とあります。

島にすがりつくと言い換えれば、何としてでも生きたい…という切なる思いを感じます。

それなのにすがりつく島が見えないなんて…そんな状況は体験したくないものですね。


取り付く島

取り付く島もないの使い方・例文

【取り付く島もない】の使い方と例文をご紹介します。

無愛想で相手をかえりみる態度が見られない時に使うことから
例えば
「お金に困って銀行に借金を申し込みに行きました。

しかし、銀行員は氷のような冷たい態度。

まさに、取り付く島もない対応でした」

「取り付く島もないような拒絶の響きがある声」

など相手が不機嫌で冷たい扱いを受けた時に使います。

冒頭での同僚は営業先の方から、つっけんどんな対応をされ相手にされませんでした。

まさに「取り付く島もない」対応をされたわけです。

…同僚は意味を知っていましたが、言い方を間違えていました(笑)


英語では

  • resource(名詞)で(万が一の時の)頼み、方便
  • throw(動詞)は(問題解決のために)投入する、(努力・労力を)つぎ込む

を使います。

この二つの単語を使って、to be thrown upon one’s own resources.(取り付く島もない)

例文にすると、Then I shall be thrown upon my own resources.(そう言われると僕は取りつく島も無い)と書きます。


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まとめ

【取り付く島もない】のほかにたくさんの類義語があります。

「にべもない」「けんもホロロ」「目もくれない」「鼻にもかけない」「木で鼻をくくったような」「歯牙にもかけない」など。

どの言葉も「相手がまともに取り合わない態度をとるさま」という意味です。


最後に【取り付く島もない】の雑学を紹介しますね。

江戸時代の小説で井原西鶴の「浮世草子」(元禄元年(1688)刊)があります。

浮世草子は江戸中期に発行された江戸に住む人たちを描いた町人文学の代表作。

この浮世草子に【取り付く島もない】が使われているんです。

江戸時代の小説なんて知らないよ~!難しそう!って思う方も多いかと思いますが、浮世草子は今風の言い方をするとライトノベルみたいなもの。

江戸の町を舞台に笑いあり涙ありのペロッと読めてしまう人情小説は、江戸時代の大ベストセラーとなりました。


この「浮世草子」の特徴は、江戸町人の心をありのままに書き出しているところです。

その一節に、「何に取付嶋もなく,なみの音さへ恐しく,孫子に伝て舟には乗まじきと」とあります。

たった一節だけでもその人物の途方に暮れている心境が伝わってきますよね?

【取り付く島もない】が江戸時代から使われていたこと、使われている証拠が江戸時代の小説の中にあることを何かの機会に、紹介するのも楽しいかもしれません。


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