「それはないね。ありえない」
「そんなにべもない言い方しなくったっていいじゃない!」
彼女は怒って言ってしまいました。呆然とするタケシ君。
ありえない、っていっただけなのに…。ところで、「にべもない」ってなんだよ(;´Д`)
という訳で、今回はにべもないの意味や語源、正しい使い方について見ていきましょう!
にべもないの意味は?
「そうだねぇ」と相づちを打ってほしかったところに、ピシャッと「ありえない」と決めつけた言い方をしてしまったので、「にべもない」と言われる結果になったわけです。
にしても「にべ」ってなんでしょう?
つぎに語源について見てみましょう!
にべもないの語源とは?
にべもないの語源を調べてびっくり!「鮸・鰾膠」=魚の名前が出てきました!
「鮸」も「鰾膠」も「にべ」という魚を表す漢字。「にべ」と呼ばれる魚がいたんですね(;゚Д゚)!
正式には、顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区刺鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目ニベ科ニベ属。
全長約80cmといいますから、結構大きい魚ですね。
日本の近海で獲れて塩焼きにしたり、煮付けにして食べられるそうです。
特徴は「うきぶくろ」が大きく発達していて、それを使って、ぐーぐーという音を出すところ。
で、その「うきぶくろ」を煮て「膠(にかわ)」を取るのですが、その前に「膠って何?」ですよね。
「膠」というのは、「獣類の皮・骨・腸・爪などを煮出した液をさまして固めたもの。木材の接合、絵の具用」です。
現在のような化学合成で接着剤が作られる前は、仏像や漆器などにこのような天然の接着剤が作られていたのですね。
ちなみに「絵の具」とは日本画などで、顔料に混ぜて使うことを示しています。
「鮸」の浮き袋は大きく発達していて、「膠」の原料にされたのですね。
「にべにかわ」とも言われたようですが、単体の「にべ」で、「膠」のことだけでなく「粘着力が強い」「ぴったりくっつく」ものを表すようになったのです。
さて、ずいぶん遠回りしてきましたが、問題の「にべもない」です。
「にべ」は今、見てきたようになにか「くっつく」もの。
それが「ない」ですから、くっつかない、あっさりしている、さばさばしているということで、人間関係では「愛想がない」「おもいやりがない」という意味として使われるようになったのです。
魚からきているとは、思いも寄らなかったですね!
にべもないの使い方・例文
- ○○と話し出そうとするのをにべもなくさえぎられた
- そんなにべもない言い方しないで!
- 「キミには関係ない」とにべもなく言われた
「キミはおもいやりがない」と言っても、「キミはにべもない」とはけっしていわないですね。
「にべもない」=「愛想がない」「おもいやりがない」ではなくて、「にべもない」は言葉や態度を表す語なのです。
それにしても、用例を見てもらえばわかるように、「ピシャッとさえぎる」というイメージがある、かなり強い言葉。
また、「にべもない」なら「あり」もあってもよさそうですが、この場合「にべあり」の用法はなさそうです。
ただ、江戸時代の浄瑠璃になかで「にべる」という用例があり、「執着する」の意味でとるようですが、他にはあまり例をみないようですね。
似たような意味の言葉に、「頼りにして取りすがるところがない。すがりつくところがない」という意味で「取り付く島もない」があります。
さいごに
「にべもない」にしても「取りつく島もない」にしても、やはり島国日本、魚や海に関わる慣用句・ことわざは多いですね。
その中ででも「魚の名前が使われている」もので、よく耳にするものをいくつか挙げてみました。
- 【鰻(うなぎ)の寝床】:間口が狭く細長い家などをたとえる
- 【鯖(さば)を読む】:数をごまかすこと
- 【海老(えび)で鯛(たい)を釣る】:少しの労力で大きな成果を得る
- 【腐っても鯛(たい)】:本当にすぐれたものは、多少傷んでもほかのものより価値がある
- 【鰯(いわし)の頭も信心から】:どんなにつまらないものでも、深い信仰心が不思議な力を持つたとえ。また、それを頑固に信じ込んだ人をからかう意味でもちいることもあり
さすが島国ニッポン。ちょっと見ただけでもこんなにでてきました。
暮らしのなかのちょっとした場面で上手に使えると、言い方にバリエーションがでますよね。
言葉を知っていることは、それだけ広い世界を知っていること。
たくさんの言葉に触れて、自分の中の世界を大きく広げていきましょう。
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