あまり聞きなれない「象牙の塔」という言葉。

「象牙」と言えば「象のキバ」のこと。


象牙の塔


日本では昔から、根付や印籠、櫛や箸、近代では印鑑や楽器など様々な日用品に使われてきました。

近年では、高値で売れることから密漁などの問題も話題になりましたよね。

そんな「象牙」を使った言葉ですが、いったいどのような意味があるのでしょうか?

今回は「象牙の塔」の意味や語源、使い方を解説していきますね!



象牙の塔の意味・読み方は?


「象牙の塔」は「ぞうげのとう」と読みます。

「学者などが研究に熱心になり、現実社会と疎遠になること」を意味します。



ですが、そう言われてもあまりピンと来ませんよね。

なぜ「象牙の塔」でこのような意味になるのでしょう?

この言葉だけを見るとなぜそうなるのかまではわかりません(;´Д`)

語源を知って、その歴史からこの言葉を理解していきましょう!


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象牙の塔の語源とは?

それでは「象牙の塔」の語源を解説していきますね。

意外だったんですが、実は、日本で生まれた言葉ではありません!

元々は雅楽(がか)という旧約聖書中の一書から来ています。

雅楽は男女の愛、あるいは勝利を歌ったもの、ユダヤ教では神イスラエルに愛を歌ったもの、キリスト教ではキリストと教会の間の愛の関係を歌ったもの、などと現在でも様々な解釈があります。


その中の7章4節に「なんじの首は象牙の塔のごとし」(この場合、恐らくうなじとされています)とあり、女性の美しさを例えて使われた言葉なのだそうです。

これだけ見ると現在使われている意味とは、随分かけ離れていますよね。


実は、現在使われている「学者などが研究熱心になり、現実社会と疎遠になること」という意味に転換したのはフランスのサント=ブーヴという人物だと言われています!

“シャルル=オーギュスタン・サント=ブーヴ”

19世紀フランスの文芸評論家、小説家で、ロマン主義を代表とする作家の一人であり、近代批評の父と言われる人物です。



そのサント=ブーヴが1837年に、詩人アルフレッド・ド・ヴィニーに「象牙の塔から出てきなさい」と彼の態度を評したと言われています。

ここで気になるのが「なんで雅楽から突然意味が変わってるの?」だと思うのですが、実はサント=ブーヴが何故この言葉を使ったのかは、残念ながらはっきりとはわかっていないのです。

彼は文芸評論家ですから、私たちにはわからないような何か特別な考えがあったのかもしれません。


サント=ブーヴが使った言葉はフランス語で「la tour d’ivoire」、更にこれを厨川白村(くりやがわはくそん)という人物が、日本語に訳し紹介しました。

彼は日本の英文学者、文芸評論家で1912年の「現代文学十講」で「象牙の塔」を紹介し、その後の1920年の「象牙の塔を出て」の序文でもそのことに触れています。

ここでようやく日本でこの言葉が知られるわけですね!


サント=ブーヴ初め、文芸評論家や詩人達が使い初めた言葉ですから、実際に彼らの中にもその当事者は多かったのでは?と感じられます。

そう言う点では「学者達が研究に熱心になり、現実社会と疎遠になる」という意味の言葉が生まれるのも納得です!


厨川白村が紹介したとことで、現実社会とかけ離れた「象牙の塔」は、それを揶揄する、皮肉に使う言葉として日本で広がりました。

それではこの「象牙の塔」どのように使用出来るのでしょうか?次で使い方を説明します!


象牙の塔

象牙の塔の使い方・例文!

「象牙の塔」の使い方を例文を使って紹介します。

  • 「社会の苦労など、象牙の塔の住人にはわからないだろう」
  • 「画家の彼はずっと象牙の塔にこもっていたので世の中のことには疎い」



2つの例を出してみました。

1つ目の「象牙の塔の住人」これは象牙の塔の中にいる人、つまり研究室にこもる学者や研究者その人を意味します。

研究室にこもっているから社会のことなどわからないのだろう、世間知らずだろう、と皮肉っていますね。


2つ目のように「象牙の塔にこもる」という使い方も出来ますよ。

「象牙の塔=研究室」いう例えで、この場合は画家なので「アトリエにこもっているから~」といった感じでしょうか。

やはりこれも皮肉っていますよね(^-^;

学者、研究者以外にもこのような芸術家や学生にも使うことが出来ますよ。

この様に「象牙の塔」は良い意味ではなく、揶揄することや、ネガティブな意味で使われるのが一般的なのです。


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さいごに

「象牙の塔」の本元はフランス語からの訳でした。

ちなみに、英語だと

  • ivory tower

カタカナ読みをすると「アイボリータワー」です。

直訳で「象牙の塔」日本語と同じですね!

やはり英語も日本語同様、フランス語から来ているようですよ。


日本語の言葉は当たり前に日本で生まれた言葉なのかと思いきや、この言葉は旧約聖書から、そしてフランス語が訳された言葉でしたね!

サント=ブーヴが例えた言葉が日本にまで伝わり、現在もこの様に日本語として使うことが出来ているなんて、とても壮大な話のように思えます。

言葉は違えど意味はしっかり伝わっていますよね!


使う機会は少ない言葉かもしれませんが、この言葉を使う時がきたら是非参考にしてくださいね。

また、語源がとても面白い言葉ですので雑学としても覚えていてもらえるといいと思います!


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