ある職場での一幕。
先輩から「そんな舌先三寸でしゃべるな!」と注意をされた後輩。
その後輩は「あれ?口先三寸なら聞いたことがあるのに舌先三寸って?間違いを指摘したら面倒なことになるかもしれないから黙っておこう」と素直に自分の非を認め謝罪しました。
後日、何気なくインターネットを見ていたら、実は「舌先三寸」が正解で「口先三寸」という言葉は間違いであることを発見。
その後輩は「あの時言わなくてよかった」とほっと胸をなでおろしてました(笑)
このように、自分の中では正しい表現だと思っていたのに、意外に間違ったまま覚えてしまった言葉だったということは良くあることだと思います。
頻繁に使うことのない言葉だからこそ、こういった注意が必要になってくるものです。
今回は「舌先三寸」について、意味や使い方などについて見ていきたいと思います。
舌先三寸の意味・読み方とは?
誉め言葉ではなく、悪い意味を含んだ言葉という感じですね。
この言葉は、冒頭部のように「口先三寸」と間違って覚えてしまうのも無理のないことのようです。
文化庁が毎年発表している「国語に関する世論調査」において「本心でない上辺 (うわべ) だけの巧みな言葉」を表現するのに「口先三寸」と間違って使ってしまう方の割合は半分以上であった、というデータが発表されていました。
なぜ、このように間違った言い方がされているのでしょうか。
次の章で「舌先三寸」の語源に触れながら確認してみたいと思います。
舌先三寸の語源とは?
まずは、それぞれの言葉について再確認していきたいと思います。
「舌」や「先」という言葉は説明不要でしょうが「三寸」については少し触れておきましょう。
「寸」は昔使われていた長さを表す単位(建築業などでは今でも使われるようですが)のことで「一寸」は今で言うと約3cm。
「三寸」は約9cmということになりますね。
ですので「舌先三寸」は舌先が三寸であるほど短いということになります。
舌先を話の中での言葉やその質、三寸を短いことの例えとして使っており全体としては「話の内容が薄っぺらい」ことを表しています。
ということで、この言葉は「上辺だけのうまい言葉で心や内容が伴っていない」という状況で使われるのです。
では「口先三寸」という間違った言葉はどこから出てきたかについて考えていきましょう。
一般的に「舌先」という言葉よりも「口先」という言葉のほうが良く見かけますよね。
「口先だけでものを言う」「口先の上手い」または直接的な意味での「口先をとがらせる」など。
このように「口先」という言葉のほうが比較的良く見る言葉であるからこそ、いつの間にか混同してしまい「口先三寸」という言葉として覚えられるようになったのではないでしょうか。
確かに「口先」のほうがイメージしやすい言葉ではありますが「口先三寸」という言い方は間違いになりますので、正しい言葉として覚えていきましょう。
舌先三寸の使い方・例文
では実際の使い方や例文について見ていきますね。
- 「舌先三寸でお金をだまし取る」
- 「舌先三寸で人をだますなんて悪いヤツだ」
- 「どうも言っていることが舌先三寸に聞こえてならない」
など、上辺だけである言葉やそれによって相手をだます状況で使われている言葉です。
「あの人は、口ではああいうことを言うけど、実際に行動が伴ってないよね」なんて場面でも「あの人は舌先三寸だね」と使わることもあります。
できるだけ人に言われたくない言葉ですね。
また似たような意味の四字熟語として「一口両舌」(いっこうりょうぜつ)という言葉もあります。
1つの口の中に2枚の舌があるかのように「前に言った内容と後から言った内容とが大きく食い違っている」ことを表した表現となっています。
「二枚舌」と言うとしっくりくるかもしれませんね。
まとめ
いかがでしたか。
「舌先三寸」という言葉についていろいろと見てきました。
「口先」という言葉をよく目にするため「口先三寸」と間違って使っている方は意外にも多いということには注意が必要ですね。
「上辺だけの上手い言葉で行動が伴っていない」状況を表す言葉。
その他には「口だけは立派」「口先だけ」「うまい言葉で」さらに言うと「心にもない」「歯の浮くような」などと言う言葉も似た意味として挙げられるでしょう。
誰かに言われた場合、あまり気持ちの良い言葉であるとは言えないかもしれませんが、相手の話の内容が「ちょっとうわべだけだなあ」と感じてしまった場合、そっと「舌先三寸」であることをたしなめてみても良いのかもしれませんね。
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