TVなどで流鏑馬(やぶさめ)の映像を見たことがある人もいるのではないでしょうか。
馬に乗って弓を構えている姿は、何とも勇ましいものです。
また、オリンピックでアーチェリーの競技を見た時なども、的に向かって弓を構えるその姿に「かっこいい」と感じてしまいますよね。
このような姿を「弓を引く」などと表現しますが、実は慣用句の世界にも同じ言葉があります。
今回は、「弓を引く」の意味や使い方、またどういったことからその言葉が使われるようになったのかについて見ていきたいと思います。
弓を引くの意味・読み方とは?
もちろん、この言葉は冒頭部のように、実際に的を射抜くための「弓を引く」動作を表す場合もありますので、注意が必要。
このように普段、一般的に使う言葉でも、実は慣用句としての意味も同時に持ち合わせている言葉もあります。
そういった言葉を見たり聞いたりした時は、話の前後から内容をくみ取って、どちらの意味で使われているのかについて気を付ける必要がありそうですね。
弓を引くの語源とは?
では、実際に「弓を引く」ことについて考えてみます。
まずは、弓に矢をつがえて狙いを定める。
その後、的に向かって矢を放つことになります。
この一連の動作が「弓を引く」ということ。
「的に向かって弓を引いているのに、なぜ反抗の意味になるの?」と思ってしまいそうですが、例えば戦国時代の合戦を思い出してください。
攻め込んできた敵兵を討つために、弓矢で抵抗しようとするあの場面です。
「弓を引く」という行為は「反抗勢力に対して抵抗する」ということがイメージできたのではないでしょうか。
ですので、必ずしも実際に暴力行為をするという意味ではありません。
弓を引いた時点で、その人に対して敵意を表すことになりますので、慣用句としての「弓を引く」の意味は「その人に対して反抗する」ということになります。
なんとなく殺伐とした感じがしますよね。
「弓を引く」からには、それ相応の思いというものがあるのでしょう。
弓を引くの使い方・例文
では、実際に「弓を引く」を使った例文を見てみましょう。
例えば、会議の場で上司の意見でほぼ決まりかけていた時。
自分は全く違う意見なので「どうしても納得はできない」などということもあるのではないでしょうか。
その場は、会議を終えましたが、その後同僚に「納得できないから自分の意見を言おうと思うんだ。」と話してみました。
すると、その同僚から「そんな弓を引くようなことはしないほうがいいよ。」という助言。
それでも、気が収まらず「例え弓を引くことになろうが、それでもかまわない。」と言い残し、上司の元へ直談判をしに向かいました。
このような場面で使うこととなります。
「弓を引く」という言葉には「恩を受けてきた相手に対して反抗する」という意味合いも含まれているのではないでしょうか。
また「弓を引く」ということは、よっぽどの覚悟が必要とされます。
目の前に現れた人から、いきなり弓矢で狙われたら、それこそ争いは避けられないでしょう。
「弓を引く」ことで例え悪い結果になろうとも、それほどの覚悟を持って反抗する、ような場面で使うことになります。
ですので、例えば道で誰かと肩がぶつかった場合。
相手から文句を言われたとしても、文句を言うことが「弓を引く」とはなりません。
二人の間にある程度の関係性が出来上がっていて、なお、意見などに大きく反抗する場合に使う言葉と言えそうです。
ちなみに、「弓矢を引く」という言葉もありますが、慣用句の意味で使う場合は「弓を引く」が正しい言葉。
「なんとなく意味が通じるから1文字くらい間違っていても…」などと思ってしまいそうですが、人によっては「そんな言葉も分からんのか!」と思われてしまうこともあります。
正しい言葉を正確に覚えたいものですね。
まとめ
いかがでしたか。
「弓を引く」の意味や、その言葉が使われるようになった背景などについて見てきました。
「弓を引く」とは「反抗する」こと。
そこには、お世話になっている人に対して背く、という意味合いが含まれていることが理解できたのではないかと思います。
また、例文で紹介した場面では、上司に反抗したら最悪左遷なども考えられる状況です。
状況が一変するくらい重大な反抗であることも押さえておきたいですね。
似たような言葉で言い表すならば「たてつく」「恩を仇で返す」などの表現もできるでしょう。
実際に、人に向かって「弓を引く」ことは相当に覚悟がいることです。
そのことからも、慣用句としての「弓を引く」には覚悟を持って反抗する場面で使われるということが見て取れます。
「弓は引くもの、矢は射るもの」という言葉があるそうです。
このことを知っておくと、間違った慣用表現はしなくなるのではないでしょうか。
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