「斜に構える」って、時々耳にする言葉ですね。
私も中学生くらいのときに、親と私の会話を聞いていた祖父から、「斜に構えてないで、もっと素直にしなさい」と怒られたことがあります。
でも、「斜に構える」ってどんな意味なのでしょうか。怒られたってことは、良い意味ではなさそうですよね。
なんとなく、「ひねくれた態度」のような雰囲気がしますが…
今回は、ちょっと意味が分かりにくい「斜に構える」について、読み方や意味、使い方を紹介していきますね。
斜に構えるの意味・読み方とは?
この句で使う「斜」という文字は、「なな(め)」とは読まず、「しゃ」か「はす」と読みます。
少しだけ、「斜」という漢字の読み方について説明しますね。
「斜」は常用漢字(新聞などの社会生活で漢字使用の目安となるもの)で、常用漢字表に載っている読み方は、「なな(め)・しゃ」です。
「はす」は表外読みといって、常用漢字表には載っていない読み方になります。
どちらの読み方も間違えではありませんが、「斜(しゃ)に構える」と読んだ方が一般的です。
ただ、「斜(はす)に構える」と言う人もいると思うので、頭の片隅に、「はすに構えるは、しゃに構えると同じだったよな~」と入れておいてもらえると、臨機応変に対応できると思います!
ついでなので、一緒に覚えてしまいましょう!
そして、意味について。
上の3つの意味は辞書に載っている意味ですが、なんだか違和感を感じますよね。
というのも、2の意味は「物事に対して身構える」とあります。
物事に対して身構えるには、正面から向き合う必要あるはず。
しかし、3の意味は「物事に対して正面から向き合わず、~」となっていて、2とは正反対の意味です(;´Д`)
一つの言葉に、正反対の意味があるとは・・・なんとも使いづらい言葉ですね。
ただ、3の「皮肉った態度やからかった態度をとる」は、実は、誤った使い方からできた意味だったのです。
理由は、次の語源で詳しく説明していきます。
斜に構えるの語源とは?
「斜に構える」は剣道に由来しています。
剣道には「中段の構え」というのがあり、相手に対して刀を斜めに突き出した構えになります。
このときの形から、「中段の構え」を「斜に構える」とも言います。
中断の構えは、試合前にお互いが向き合うときの基本的な姿勢で、どこにも隙が無いため、「斜に構える」が「身構える。改まった態度をとる」という意味になりました。
このことから、「斜に構える」の本当の意味は「相手に対して真剣に向き合い、隙の無い態度をとる」ことだと分かります。
では、なぜ「物事に向き合わず、皮肉・からかいの態度をとる」という意味が広く使われるようになったのでしょう?
おそらく「斜に構える」の「斜」という漢字から、「斜に見る(ななめにみる、しゃにみる)」の同義語だと思って使う人がたくさんいたのでは、と考えます。
「斜に見る」は、「別な方向から、または、ひねくれた見方で物事を捉えること」という意味をもつ言葉です。
このことから、「斜に構える」は、「物事に対して、斜めに構える」→「物事に対して正面から向き合わない」→「物事に対して正面から向き合わず、皮肉った態度をとる」と間違った意味が浸透していったのでは、と・・・
最近では、この間違った意味が定着していて辞書にも掲載され、「斜に構える」は正反対の意味を持つ言葉になってしまいました。
斜に構えるの使い方・例文!
まず、本来の意味である「身構える、改まった態度をとる」の例文から紹介します。
今日は大事な取引先との打ち合わせ。自分の考えたプレゼンを、初めて発表する場でもあります。
部長から、「緊張し過ぎるのはよくないけど、斜に構えて堂々と発表してこい」とエールをもらえました。
次に、「正面から向き合わず、ひねくれた態度をとる」の例文を紹介します。
A君は最近、「周りと自分は違うんだ」ということを強くアピールしたいようで、一人で掃除をサボって、掃除をしている人を見下したような態度をとっています。
最初はみんな、掃除をするよう声をかけていましたが、全然効果がないので先生に言ってもらうことにしました。
報告を受けた先生が飛んできて、「A!いい加減にしろ!そんな斜に構えたって誰にもモテないし、ただの迷惑だからな!」
A君も先生に叱られたので、掃除をするようになりました。
現在では、「斜に構える」は本来の意味より、「ひねくれた態度、からかった態度をとる」という意味で使われることが多い言葉。
誤解を与える可能性が高く、できるならあまり使わないほうが良いと思います。
最後に「斜に構える」の同義語を紹介していくので、こちらの使用をおすすめします。
本来の意味の「斜に構える」の同義語
- 身構える(みがまえる): 敵に対して迎え撃つ姿勢を整えて構えること、自分の立場を守るよう用心して構えること
「ひねくれた態度をとる」の「斜に構える」の同義語
- 斜に見る(ななめにみる、しゃにみる): ひねくれた見方でものを捉えること
まとめ
今回は、「斜に構える(しゃにかまえる)」について読み方や、語源、使い方を見てきました。
本来の意味の「物事に向き合って、改まった態度をとる」より、間違った意味の「物事に向き合わず、ひねくれた態度をとる」の方が広く浸透してしまった言葉でしたね。
今度から「斜に構える」と言われても、相手の話している内容から「どっちの意味かな?」と考えないといけません。
今、使っている言葉もあと数十年後とかには、違う意味で使われているかもしれないので、なんとなく知っている言葉でも、気になったら調べていく癖をつけていきましょう!
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