例えば会議の場で、とても重苦しい雰囲気の中、突然誰もが納得するような良い意見が挙がることってありますよね。
自画自賛するほど「良い意見が言えたものだ」と鼻歌交じりに歩いていたら、突然上司から「いやー。さっきは的を射た発言だったね。」と言われることも。
このような場面で使われる「的を射る」という慣用句。
意味を全く知らないと「あ、ありがとうございます。」と言葉に詰まりながら、逃げるように立ち去る、なんてこともあるのでは?
もし「的を射る」という言葉を知っていたら、もう少し気の利いた返し方ができたかもしれませんね。
というわけで今回は、意味や語源などに触れながら「的を射る」という言葉について見ていきたいと思います。
的を射るの意味・読み方とは?
冒頭部の例では「的確に要点をとらえているほど良い意見」であったため、誉め言葉として上司は使ったのですね。
それなのに、あまり反応が良くなかったので、上司もびっくりしたのではないでしょうか。
また、「的を射る」と似たような表現として「当を得る(とうをえる)」「正鵠(せいこく)を射る」などがあります。
「当」は「該当」のように「あてはまる」ということ。
「正鵠」は「的の中心」という意味で、そこから「物事の要点」を表す言葉として使われています。
的を射るの語源とは?
続いては「的を射る」の語源です。
なんとなく想像できそうですが「うまく目標に当てる」ことからきているとされています。
「弓矢を使って正確に的に当てる」というあのイメージです。
「正鵠を射る」でも触れましたが「的」を「物事の要点」として例えているのですね。
「うまく目標に当てる」→「物事の要点を的確にとらえる」→「的を射る」
まとめますと、このようなかたちとなります。
慣用句は、言葉の成り立ちとともに理解してみると、意外にも記憶から離れにくいです!
併せて覚えておきましょう。
的を射るの使い方・例文
では使い方の説明に移りたいと思いますが、ちょっとその前に。
「的を射る」という表現と同じくらい「的を得る」という言葉も目や耳にすることもあるのではないでしょうか。
これは無理もないようで、文化庁が発表する「国語に関する世論調査」においても、そのようなデータが発表されているようです。
「物事の肝腎な点を確実に捉えること」に対して「的を射る」(本来の使い方)と「的を得る」(本来の使い方でない)のどちらを使うか、に対して
- 平成15年度 「的を射る」38.8% 「的を得る」54.3%
- 平成24年度 「的を射る」52.4% 「的を得る」40.8%
という数値になっていました。
こうしてみますとだんだんと本来の意味として使われ方が広まったのでは?とも取れますが、実は「射る」と「得る」どちらが正しいとは一概に言えないよう。
辞書によっては片方しか載せていなかったり、または両方載せてみたりと、どうやら正しい使い方の定義が無いようですね。
この調査では「的を射る」が正しいとされていますので「物事の肝腎な点を確実に捉えること」という意味では「的を射る」と使ったほうが無難だと言えますね。
話が長くなってしまいましたが「的を射る」を使った例文を紹介します。
- 「彼の的を射た発言に一同はっとした」
- 「意見がまとまらない中、突然的を射た意見が飛び出した」
- 「あの人の意見はいつも的を射ている」
補足しますと、冒頭部の例のように、あまり意見がまとまらない話し合いってよくありますよね。
そんな中、誰もが納得するような鋭い意見がいきなり飛び出したとします。
まるで、もやもやとした中から一本の矢が的に命中するイメージが浮かびませんか?
このように、発言や意見を褒める場合には「的を射た発言、意見」
発言や意見をした人を褒める場合には「○○の意見(発言)は的を射ている」というように使います。
ではここで、英語ではどう使うのか見てみましょう。
例えば、英語では「hit the nail on the head」で「的を射る」という言葉を表現します。
「nail」という単語は「爪」の意味もありますが、ここでは「釘」という意味ですね。
ですので、直訳すると「釘の頭にあてる」という意味となり「的を射る」という慣用句を表していることになります。
英語ではこういった使い方なのですね。
「釘の頭」も「的」も「小さいもの」を表しているのでしょう。
物事の本質はとても小さいようですが、それを見事に打ち抜く。
そういった場面が見て取れそうです。
まとめ
いかがでしたか。
「的を射る」についていろいろと見てきました。
「的を射る」は「的の中心を射抜く」ことから「物事の要点を的確にとらえること」となっていることが理解できたかと思います。
あまりまとまっていない意見の中から鋭い意見が飛び出したら思わず「それだ!」と声が出てしまいそうです。
誰もが納得する意見を発することは簡単ではないでしょうが、いつか私も「的を射た○○」という表現を使われてみたいものです。
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